(1)ライセンス契約とは
一般的なライセンス契約とは、ライセンサー(技術情報の所有者)がライセンシー(技術情報の提供を受ける企業)に対し、特定製品の製造に必要な技術・ノウハウを提供し、特定の市場で製造・販売する権利を供与する当事者間の合意のことを言います。
(2)ライセンス契約の留意点
a. 実施権
ライセンシーがライセンサーから付与される製造・販売の権利を実施権と言います。
(a)許諾領域
ライセンサーがライセンシーに対して実施権を認める国・地域を許諾領域と言います。
(b)独占的実施権・非独占的実施権
実施権は独占的実施権と非独占的実施権に分けることができます。独占的実施権とは、ライセンシーが許諾領域において独占的に製造・販売を実施できる権利であり、ライセンサーは許諾領域内ではライセンシー以外の企業に対して実施権を付与することができなくなります。非独占的実施権を付与した場合、ライセンサーは同じ許諾領域内で他の企業に対しても実施権の付与を行うことができます。
(c)サブライセンス
ライセンシーが許諾された実施権を第三者に再許諾することをサブライセンスと言い、たとえばライセンシーが関連会社にサブライセンスすることによって、許諾製品の製造・販売を関連会社に行わせることが可能となります。
b. ロイヤルティ
ライセンシーがライセンサーに支払うライセンス実施料をロイヤルティと言います。ロイヤルティの支払方法として、以下では契約発効時に一時金を支払い、その後は出来高払いとなる一般的によく見られるケースを説明します。
(a)イニシアル・ロイヤルティ
イニシアル・ロイヤルティとは契約発効時に一時金として支払われるノウハウ・技術の開示料・技術指導料であり、製品が売れない場合も支払われます。
(b)ランニング・ロイヤルティ
ランニング・ロイヤルティとは許諾製品の製造・販売に応じて支払われる出来高払いの対価であり、「販売額x5%」「$100/個x製造数」など、契約で合意した計算式で算出します。
(c)ミニマム・ロイヤルティ
ライセンシーの製造・販売活動に問題があり許諾製品が売れない場合、ライセンサーが受領するランニング・ロイヤルティも少なくなります。特に、独占的実施権を与える場合、ライセンシー以外に実施権を供与することができないため、ライセンサーとしては打つ手がなくなります。したがって、ライセンサーとしては、ランニング・ロイヤルティの最低支払保証(ミニマム・ロイヤルティ)を契約書に規定し、製造・販売がゼロでも一定のロイヤルティを確保することが重要です。
c. 技術の改良・混同
供与技術が相手によって改良される場合、供与技術が相手の技術と混ざることがあります。したがって、技術改良の可能性がある場合は知的所有権について取り決めておく必要があります。