以前勤務していた三菱重工神戸造船所で、最後の進水式があったと先日のニュースで見ました。私が所属していた法務部門も、進水式当日は総務の手伝いをしたり、本社原子力のマーケティング担当者のころは、お客様を案内したりしたこともあり、ちょっと懐かく思いました。
造船事業自体、厳しい国際競争にさらされ、いくら技術やコストダウンを追求しても、コストが価格に追いつかない状況がずっと続いていた中で、コモディティー化(要するに誰でも作れるような、技術の陳腐化)した製品であるタンカーなどの一般商船で、よくここまで粘ってきたなあ、というのが率直な感想です。利益に厳しい米国のGEであれば、それこそとっくの昔に事業撤退しているはずです。
事業撤退というのは、極めて難しい判断です。国際競争、円高など、自社ではコントロールできない外部環境の中で、必死に知恵を絞り、粘りまくったが、「万策尽きた」ということですが、「万策尽きた」という判断が難しいのです。したがって、スピードの速いGEなどは、確保すべき利益率などの基準が数字で明確にあり、撤退を客観的に判断できる基準を持っています。しかし、撤退基準を持てる企業は、新しい事業を立ち上げる力を持っていることが前提であり、撤退したがやることがないという企業は、ズルズルと儲からない事業を必死で継続するしかない、ということなのです。
最後の最後まで儲けを吸い取るという「粘り」なのか、他に新しい事業を立ち上げる力がないから「しがみついている」だけなのか?製造業が事業を継続するということの困難さを改めて考えさせられた。