月別アーカイブ: 7月 2012

人をコストとして見ることの悲劇

新聞で2つの記事が目に付いた。・スズキ自動車のインド工場で労働者の暴動・放火で死人が出た。・日本では、長距離バス事業者が、大事故をきっかけに締め付けが厳しくなり、しかも過当競争のためにまともにやると採算が合わないため、現場の運転手に無理なサービス残業や、法律違反の運行をすることで無理やり事業を続ける一方、多くの事業者が撤退し、今後、価格が上がり、運行本数が減少することになる見込み。一部の人間への締め付けを前提に描いた事業プランや、安値でしか客を捕まえることのできない事業者は、やはりどこかに無理が出てしまう。事業継続のためには、経営者がコストを見極めなければならず、人件費をどうするか、というのは経営の大きなテーマではあるが、人間は機械ではない。自分が、機械やコストとして見られ、安い金で、無理なしわ寄せや嫌なことを押し付けられたら、どう思うだろうか?私が中国の発電所の建設現場で長期滞在した際、三菱重工にはボイラ担当とタービン担当の2人の所長がおり、私はボイラ担当の所長の元で仕事をした。私の所長は中卒の現場上がりで、このプロジェクト終了後まもなくして亡くなってしまったが、お客・部下とのつながりを大切にする人だった。もう一方の所長は、最終的には社内でソコソコの幹部になったエリートであるが、事務所にこもって、数字ばかりで人を管理し、お客サイドだけではなく、部下からも人気がなかった。このプロジェクトは、無理な受注で採算が悪く、現場にしわ寄せがくる最悪の案件であったが、そういう案件だからこそ、所長がどこを向いて仕事をしているかがよくわかった。私の所長は客・現場を見て仕事をしていたのに対し、もう一方の所長は遠い日本の自分の上司を見ていた。遠く日本から採算しか見ない人たちからは、恐らく私たちの現場は何をやっているんだ、ということだったのかもしれないし、私も日本側と現場の間でしんどい思いをすることも多かった。しかし、今になってみると、やはり客や現場を見た対応をした私の所長が正しかったと思う。スズキのインド工場の幹部は、暴動を起こしたような人たちの中に入っていって、酒を飲んだり、笑ったりしていたのだろうか?人を単なるコストや機械として見てはいなかったのだろうか?いずれにせよ、誰かに無理が集中するようなことは、長続きしないのだ。

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アスクルの乗り越えてきた壁

カンブリア宮殿でアスクルの岩田社長が出ていた。文房具メーカであるプラス社の一部門として誕生したアスクルが今日の大成功に至るまでの道のりで、多くの高い壁を乗り越えてきたことに感心した。メーカーの一部門であったため、アスクル部門が定価よりも値下げした価格で中小事業者へ販売することに対しては小売がクレームしてきた。だいたい、メーカーが卸・小売を中抜きして直販する際、まずは卸がエゲツナイことをしてきたり、メーカーが流通に気を使って結局何もしない、ということはよくある。つぎにアスクル部門が他社製品を扱うことについては社内営業が大反対してきた。これまた、当たり前と言えば当たり前で、なんで自社製品を売らないのか、ということだ。番組では少ししか紹介されていなかったが、アスクルが成長できたのは、当時のプラス社社長が、アスクル部門をサポートした、ということが極めて大きい。目先の利益やトラブル回避のため、できない理由を並べて変わろうとしない社長はたくさんいる。なぜ、プラス社社長がサポートしたのか、番組では説明されていなかったが、おそらくアスクルの「より消費者の利便性を高めたい」という理念に共感し、さらに最終的にはメーカーのプラス社としても得すると考えたためだろう。現在、アスクルはプラス社から独立し、巨大な流通企業となり、巨大な流通企業が持つ価格決定権と顧客の声の収集を武器に更なる成長を続けている。そして、当初反対した小売である町の文房具店は、アスクルの代理店として地域密着で成長している。いいビジネスモデルというものは、合理性と関係者の利害の一致、結局これに尽きるということだ。

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