月別アーカイブ: 6月 2012

自分の強みを活かした新規事業の難しさ

日経新聞で、医療用器具でいくつも世界トップシェアを持っているマニーの社長が出ていた。会社がまだ小さな頃、手術用のメスを借金して3年かけて開発し、ようやく出来たところ、他社が到底追いつけないようなメスを開発し、結局販売を断念した。敗因の原因は、自社の強みは針金加工であったにもかかわらず、板金加工のメスにいきなり挑戦したためだ。その後、得意の針金技術を使い、眼の手術用メスを開発し、事業的に成功する。ここで重要なことは、「強み」と「できること」をシビアに分析し、分けていかなければ、プロ同士の戦場では勝てない、ということだ。安易に「できること」は誰でもできるのだ。従って、「できること」で勝負すると値下げくらいしか手がなくなってしまう。高付加価値のサービスを提供するには、「強み」を磨く他ない。「普通のメス」と「眼専用のメス」という微妙な差に気づけるかどうか。ここが勝負の分かれ道であり、経営者の力量ということだ。さらにこのマニーの話でスゴイと感じたことは、負けたと分かった瞬間に撤退したことだ。借金して3年間投資したことがパーになってしまうとき、今までの投資が無駄になる、つまり「サンクコスト」の大きさを考えると、「撤退」という答えを出せない経営者は決して少なくない。記事の中では、あっさりと記述されていたが、当時のマニー社長にとっては断腸の思いであっただろう。しかし、ここですごいのは、この失敗を糧にして、眼の手術用メスに行き着いたことだ。失敗を致命的にしないだけでなく、将来の糧にする。マニーにとって、大きな転換点となった失敗だったのだ。

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日本陸上選手権2012

オリンピック選考会を兼ねた日本陸上選手権大会の2日目を長居競技場に見に行った。やはり面白かったのは13連覇をかけた村上と、今年急成長してきたディーン元気の勝負になった男子槍投げだ。スタンドの上の方から見ていると、このふたりの槍は、他の選手と軌道の高さがまるで違っているのが分かった。最初、村上が自己記録を2度更新し、83メートル90台をたたき出し、さすがにオリンピックでメダルを狙うベテランの執念が勝つのではないか、と思っていたら、早大のディーンが村上よりも8cm遠い84メートル台の投擲で逆転し、優勝した。オリンピックイヤーに急成長したディーンの「ツキ」と「勢い」が、そのままオリンピック代表の座までかっさらってしまった。しかし、これは村上にとってもよかったのではないだろうか。村上も恐らくオリンピック代表として選ばれるだろう。ベテランの村上にとって、もう一度自分に火をつけるきっかけになるだけではなく、ひとりエースのプレッシャーからも解放され、純粋に競技に集中できるようになれるのではないだろうか?今回の勝負がオリンピックでの戦いにどう影響するのか?オリンピックでの二人の戦いに注目したい。

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日本と欧米のものづくり思想の違い

車に詳しい経営者から「外国車はよく壊れるけど、もともと壊れるものだという前提で設計されているので、部品を取り替えれば世代を超えて乗れるが、日本の車は壊れないことを前提にしているので、一旦壊れると、部品交換くらいではきかず、エンジン丸ごと取り替えるしかなくなる」という話を伺った。前職で米国進出する初期に困ったことは、日米のモノづくりのそもそもの思想の違いであった。アメリカは、モノを作る際にプロセスを重視し、どんな小さな不具合でも、決まった手順に従って処理し、記録を徹底するのに対し、当社は、小さな不具合であれば、現場でチョコチョコっと直してしまい、それが表に出てこない、ということが発生したのだ。現場では、「今までこうやっていたし、それの方が早いし、些細なことだから問題ないだろう」ということであろうが、アメリカのお客は絶対に許してくれなかった。日本の「ミスや失敗はしてはいけないし、恥ずかしい」という精神論に対し、欧米は「人間はミスや失敗をするものである」という極めて合理的な思想が根底にあるものと思われる。したがって、欧米では誰がやっても大丈夫なように「標準化」が進んだのに対し、日本では相変わらず職人技や精巧緻密な設計といった、一部の特別な人に依存するモノづくりが重視されている。原子力でも同じではないだろうか。「原発は絶対に事故は許されない」というのは、精神論では正しいが、「人間の作ったものに、絶対はありえない」という合理的な考え方を徹底していれば、今建っている原発の中には、地震などの関係で、別の立地にすべきであったものも存在するのではないだろうか?論理ではなく、情緒や人間関係で極めて重大なことを決めてしまうのは、第二次大戦の日本軍部のころから、実は何も替わっていないのかもしれない。裏返せば、「日本のよさ」というところもないではないが、「日本のよさ」を発揮して効果のある場合と、逆に働く場合がある。合理性と精神的な「日本のよさ」をうまく使い分けるには、やはり「合理的な判断」が必要ではないのだろうか。

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